こんばんは、サンクチュアリー本店の中村です。
RCMを納車後、しばらくしてオーナーさんから依頼を受ける作業があります。
オイル交換を始め、タイヤやブレーキパッドなど消耗品の交換にメンテナンス。
そして車検と ちょっとした作業も断る事なく対応しており、製作時だけでなく
その後のアフターフォローにも相当力を入れております。
高額な車両ですから製作時は良い対応をしてくれたけど、後々の細かい作業は
やんわり断られた・・・ なんて事がない様にする。
至って普通の事なんですが、忙しいとついつい 疎かになりがちでしょう・・・
でもサンクチュアリーでは
「どんなに忙しくても、アフターをきちんと対応する事こそが大事」 と定めて
ず~っと やって来てるんです。
工場館内にあるシャシーダイナモ室は、このところ頻繁に稼働しっぱなし・・・
このダイナモでのキャブレターセッティング依頼は、とにかく問い合わせが多く
完全にパンクしてしまった為、丁重にお断りさせて頂く事もしばしばなのですが
当店で製作をしたRCMのキャブレターセッティングだけは どんなに忙しくとも
もちろん お断りなど出来ません・・・
これは先程ご説明をした、アフターケアの一つでもある訳ですから。
少し前の画像ですが、大分県在住 K・SさんのRCMー448 Ninja Fパケを
シャシーダイナモにてリセッティング。
2018年の秋に納車された車両でしたが、その後 ちょっとした作業のご依頼と
「納車時から何となくキャブの調子悪い・・・」との事にて ”里帰り” をして頂き
見直していました。
納車時はシャシーダイナモではなく、いわゆる”体感”でのセッティングでしたが
今回はダイナモを使用し、最後にロードで”体感調整”すると言うコースで 完璧を
目指す事に・・・
シャシーダイナモを駆使しているショップさんやレースコンストラクターさんは
皆さんよ~く わかっておられる事なんですが、ダイナモでセッティングする事で
効率よく、最良の結果を導ける。
それはもう、各段に違う結果となります。
ヨシムラミクニ製 TMR-MJNキャブレターは 特に特徴的なセッティングが
必要で、シャシーダイナモを使いながらもノウハウが求められるもの・・・
MJNは中域から・・・
すみません 詳しいノウハウは公表できませんが、このキャブならではの手順と
言うものがあり、シャシーダイナモを駆使するだけでなく 経験値も問われます。
最も重要になるのが、この空燃比測定値です。
最高出力付近はもちろん、低速域・中速域での空燃比を見ながらセッティングを
変更して行き、理想空燃比よりも若干濃い状態を意識して 空燃比カーブでの谷を
なるべく作らない様に燃調を行う・・・
スロットルをゆっくり合わせて開けて行った時や、急開した時の数値の変化など
更にはアイドリング時がどういう状態か、空燃比は正確に示してくれます。
シャシーダイナモ上で空燃比を合わせてあげた後に、ロードで実走するのですが
これを行ってから実走で体感セッティングするのと しないのとでは、もうまるで
違う世界・・・
ダイナモを使ってから仕上げるのと そうでないのとでは、まるで大違いなんです。
スロットルを急激にオン!
パーシャルで流れていて、シフトダウンせずに急加速した時のシチュエーション。
その時の空燃比の変化を見る・・・
加速ポンプが効いてる時と そうでない時の状態が、感覚ではなく数値で見れる事。
ここの判別ができればセッティングはよりリアルに調整できますから、ダイナモで
セッティングして行く事は科学的であり、根拠あるものなんです。
続いては・・・
ダイナモ上で暖気運転中、岩手県在住 M・Tさんの RCMー311 Z-1です。
2011年の夏に納車されたRCMですが、最近 調子を崩していたとの事から
こちらも久々に ”里帰り”し、キャブレターリセッティングを行う事に。
納車当時はもちろんキャブセットをして納車してますから、決して調子は悪く
なかったんですが、久々にエンジン始動して見ると 確かにグズついてる・・・
こちらもマフラーに空燃比測定用の検出パイプを挿入して、空燃比を見てみると
当時問題なかったセッティングにも拘わらず、あきらかに薄い数値を表示・・・
特にパイロット系、いわゆる低速域が異常に薄い数値を示しており「もしや」と
思ってオーナーのM・Tさんに確認したところ、しばらく乗っていなかったとの
事で なるほど ”パイロットバイパス系統の詰まり” が影響していると判断。
すぐに分解・清掃すると だいぶ調子が良くなったんですが、それでも微調整が
必要な状況と判断し更に進めて行く事に。
おおぉ~~~っ! なんか、りりしいっ!
男前~~~! (>_<)
スロットル開度 1/8付近の 極低速域における空燃比を測定しつつ、急開を
してみたり エンブレをかけてみたりで数値の変わり方をチェック・・・
この様にシャシーダイナモは 何も高回転域だけを調べるだけでなく、むしろ
最も実用する領域の状態を正確に把握する事ができる・・・
どこの領域が濃いのか薄いのか? パーシャル時と急開時ではどうなのか?
排気ガス中の酸素濃度をフルタイムで測定し 表示してくれるので、とにかく
燃調が一目瞭然。
もちろん 点火時期の調整による影響も数値繁栄されるので、そのマシンの
状態が正確に診断できるんです。
パイロット系が定まり、ジェットニードルのストレート径とクリップ段数に
テーパー角も決まって、メインジェットも前後に振り分けて測定・・・
何度か行ったり来たり繰り返し、どうやら「これ!」と言うセッティングに
辿り着いた模様。
これより最終測定、パワーチェックも行いましょう。
空燃比カーブが良い形になって、更には最高出力もドンと伸びました!
あとはロードで実走し、微調整すれば終わりです (^^)/
キャブレターセッティングは「こんなパターンもあるよ」ではなく、概ね必ず
回答は1つとして辿り着くもの。
その回答に至るまでの工程で、シャシーダイナモを使用するのと無いのとでは
導き出し方に大きな違いがあります。
いずれにしても、もはやこのシャシーダイナモは ここ本店になくてはならない
重要なアイテムになりました。
経験値を積み重ねて 練度を上げ、技術をより昇華させて行きたいと思います。
最後に先日無事沖縄に配送された、RCMー528 ZRX1200の動画です。
シャシーダイナモでのキャブレターセッティングシーンもありますよ (^_^)v