「どうして今回のレースで終わりなのよ?」 と、よく聞かれる事が多い・・・
「もったいない」 とさえ、言ってくれる人がいた。
もちろん、何もやめたくて終わりにする訳ではない・・・
色々な意味で厳しく 苦しいレースだからやめると、代表として決断をした。
だから、泣いても笑っても どんな結果であってもこれが最後である。
國川浩道は素晴らしいライダーであると、つくづく思う・・・
150馬力の空冷Zエンジンで、200馬力の水冷マシン勢と対等に走るのだから
それはもう見事なものだと感心するほどだ。
だが
インフィールドでバツグンな走りをしても、バックストレートエンドの伸びきりで
パワー競争に負ける・・・
そんな國川浩道の姿を見続けて、ずっと心が痛んで来た。
ずっと胸を痛めて来た・・・
そもそもハーキュリーズとスーパーモンスターエヴォは、異なる2クラスの混走
レースなのだから別であると自らに言い聞かせるも・・・
同じレースに見えてしまうのは致し方なく。
2クラス混走と言うレギュレーションも、レースを撤退する要因の一つなのだが
優れたライダーであるにも関わらず 空冷Zで戦わせてる事に居た堪れない想いで
軽々しくも自分の我が この愚行を生んだのではないかと懊悩した事もあった。
セットアップは、この2ヶ月間 苦戦を強いられた・・・
新しいタイヤへの対応も遅れて、パワービルダーの針替氏が見かねてアドバイスを
しに来てくれる・・・
実際、空気圧の調整等からタイヤの表情は変化を見せたが、それでも直系7mmの
違いは大きすぎた・・・
タイヤ直径だけでなく、コンパウンド性質も旧型とは大きく異なっていた事から
どうしても纏まらなかった為、急遽、RCM-001から前後ホイールを外して
リアを5.50リム化し、直系が小さくなる180タイヤを試してみたほどである。
だが、これもメリットとデメリットの両面があって見送る事に・・・
結局、3年前に使用していた旧タイプのタイヤを履く事に決まった・・・
纏まる方向性が見え始めた11月上旬・・・
一本の予想していなかった連絡が入る
「國川浩道、最終コーナー立ち上がりで転倒」
ここまで大きな転倒がなかった事自体が運が良かったとも言えたが、それでも
最初は耳を疑った・・・
速度を乗せて行く加速時にマシンが前転する形で一回転したと言うのだから
かつてZレーサー1号機が大破した あの記憶が・・・ 鮮明によみがえった。
マシンのダメージは激しかったが、幸いにも國川浩道に怪我はなかった。
だが・・・ メカニックの心は折れた・・・
それでも手を止める事はない。
うつろな目で黙々と修復を進めて行く。
フレームにまで影響は及んでおり、もはやベストは在り得ないだろう・・・
だが、たとえベストコンディションでなくとも
明日の前日走行に走れなかったとしても、何とか決勝の舞台に立ちたいのだ。
水冷エンジンバイクの外装を 空冷バイク風デザインにしたマシンではなく
空冷エンジンの、エンジン以外の ほぼ全てを交換したマシンで戦って来た。
サンクチュアリー クライマックス章の一つである、空冷Z最強・最速への挑戦。
いよいよ明日
最強・最恐の水冷 ハーキュリーズマシン軍団に、たった1台 空冷Zで抗う。
語り手として、最後まで見届けたいと思います。
= お知らせ =
明日11月5日はテイストオブツクバ参戦の為、サンクチュアリー本店ならびに
(株)ノーブレストは終日営業しておりません。
11月6日以降は通常営業しておりますので、よろしくお願い致します。