茨城県 筑波サーキット・・・
遠方在住が故に 筑波には一度も来られた事がない人、あるいはレースそのものに
興味がなく、それゆえ 筑波サーキットのラップタイム基準など 全くもってピンと
来ないと言う方は意外にも多いはず・・・
もちろんそれは大多数の方達がそうなのだから、別段おかしい事ではないだろう。
日本最速は何と言ってもJSB1000クラスであり、ついで今年から新設された
ST1000があって JGP‐2など600㏄クラスなど排気量別によるクラスが
いくつかあるのだが、ラップタイムはレースやクラスによって それぞれに異なる。
テイストオブツクバはヴィンテージバイクの祭典であり、基本アマチュアレースだ。
だから今並べた全日本ロードレース選手権とは異なる土俵にあり、当然の事ながら
ラップタイムも大きく劣る・・・ はず なのだが・・・
大会の中で幾つかあるクラスの中でも最高峰クラスとなる 油冷・水冷エンジン最速
ハーキュリーズクラスが57秒台を叩き出しておりダントツ。
次いで空冷エンジン最速 スーパーモンスターエヴォリューションクラスが58秒台
ラップタイムを記録している。
このテイストオブツクバ最高峰 両クラスの熾烈な走りは ありきたりな表現となるが
尋常ではない。
現行SSマシンベースのレーサーでないにも関わらず、大きく劣っていない点が
極めて凄まじい ハーキュリーズ&スーパーモンスターエヴォリューション・・・
この2つの最強・最速クラスは、残念な事がらエントリーの台数が少ない事から
2クラス同時混走にて開催されているのだが・・・
DOHC空冷2バルブ4気筒エンジンで戦う事・・・
混走である以上、同じスーパーモンエヴォクラスのマシンと鎬を削るのではなく
結局は誰が一番最初にチェッカーフラッグをくぐるのかと言うシンプルな見解に
なっていて、現時点では空冷Zのレーサーがどこまで行けるのか、そんな展開の
戦いになっていた・・・
1970年代に生誕した この空冷Zのエンジンで頂上を目指す道のりは、険しい。
かつてスーパーモンエヴォクラスには、複数台の空冷Zがエントリーしていたが
今大会はおそらく、Zレーサー3号機だけ たった1台であろう・・・
コーナーと短い直線が織りなす インフィールドにおいては、何とか対等に戦える。
タイトなコーナーが連続するワインディングロードでなら NinjaやZRXに
空冷Zでも何とかついて行ける、それと同じ様なものと思えば わかりやすい。
だが・・・
裏の直線 バックストレートから高速の最終コーナー、ホームストレートと繋がる
区間においては 正にパワーでの競り合いとなる。
いくらインフィールドで稼いでも ストレート区間で巻き返されてしまう構図は
「あぁ・・・ やはりそうだよな」と、落胆させられる現実であった。
ストレートでの加速競争でもう少し絡めるなら 希望もあると言うものだが・・・
空冷エンジンでの過剰なチューニングはイコールリスクだから、比例して不安も
倍加して行く。
コンマ1秒でもいい・・・ そんな想いから組み込んだ TW社製6速クロス・・・
150馬力近いパワーをかけて乱暴に攻め込んでも ミッションは壊れない・・・
この決して砕ける事のない靭性は信頼性が高く、耐久性は確認済みだ。
ギヤ抜け防止に貢献してくれた コウガ製ドライブチェーンラインエヴォシステムも
含めて、普段RCMのエンジンを組む上でよく使用しているストリート用パーツが
10倍もの負荷が掛かるレースに実戦投入して 結果、壊れる事無く真価を発揮して
くれたのはまだ記憶に新しい。
大排気量化や高圧縮化と言った 即パワーの要素だけでなく、吸気系の充填効率を
従来のセオリーとは違った形で実現させるべく、インテークマニホールドに溶接で
肉盛りを施し・・・
昨年11月の大会では 手を入れてやる事が出来なかったシリンダーヘッドだが
今回ようやく目指していた仕様にするべく仕上げて行く・・・
こうして形状を変え、吸気ポートの角度と口径を大幅に変更したハイポートヘッド。
ZX‐10Rの φ43スロットルボディがスムーズに取り付けされ、インテーク側
ポートは絞りや段差など ストレスフリーな構造となって実現した。
これまでにないほど大口径な分、吸入流速は落ちるであろう・・・
だが 見合った圧縮が手に入ったなら、このハイポートは いずれ化けるはず・・・
この完成したヘッドスペックがどの程度効果を発揮するのかは、まだわからないし
やっと始められたばかりであるから熟成が必要であろう・・・
だが、この日の練習走行で國川は59秒台中盤のタイムを何本も連発させていた。
昨年シェイクダウン時は 何度も練習走行を繰り返す中で59秒台をマークしたのは
わずか2~3本であったから 今回は良い感触であると、そう思いたかったが・・・
案の定、色々問題は出る・・・
スリッパークラッチのエンジンブレーキ制御が 好ましいすべり方になっておらず
スプリング交換してセッティングして行きたい所なのだが そのスプリングがない。
そこで取り急ぎ、エンブレを抜こうと再びクラッチリリース操作しながら走るが
またしてもクラッチリリースアームが回り切ってしまい、途中走行が中断・・・
おまけに後半、ケース内圧が激しく上昇してしまい 更に減圧バルブが作動不良を
起こしているのを発見し、これまた走行中断・・・
良いタイムが出ている反面、なかなかクリア出来ない問題が 軒並み足止めをする。
かのブルーサンダース代表 岩野君が ブローバイ内圧の解決方についての助言を
アドバイスしに来てくれた・・・
彼も空冷Zマイスターであり、Zのエンジンには一方ならぬ想いがある男・・・
Zのエンジンで最速ハーキュリーズマシン達に挑む姿に 共感してくれている。
空冷Zでどこまで行けるか、やれるのか・・・
そんな想いを彼も胸に持っており、それは未だ メラメラ燃えているなと感じた。
スピードショップイトウのアキオに始まり、宮市氏に、アニーズの代表 寺田氏。
ザップレーシングの長谷川氏と、サンクチュアリーレッドイーグルの吉田裕也。
PAMSの吉岡代表と竹部さんに、RUSHのカッパさんこと清水さん・・・
そして何と言ってもハーキュリーズクラスの覇者である パワービルダー針替君。
Zのエンジンに精通した名うてのチューナー達に支えられ、迎えたRound2
國川浩道は変わらず、寡黙だ・・・
空冷Zで戦う以上、ハーキュリーズマシンの加速を脅威に感じていないはずもなし。
だが 國川は
ならばそれを越えて見せると言わんばかりに、むき出しの闘志で走り込んでいた。
私はおかしいのかも知れないが、空冷Zで挑戦するこの厳しさが あえて心地よい。
あきらかに不利な空冷Zで挑む事の 何もかもが心地いいのだ。
11月8日の最高峰クラスは、たった1台となってしまった空冷Zとなるのだろう。
今大会は無観客試合・・・
筑波サーキットは編集ラグの時間差を挟んだ 初のYoutubeライブ配信を行うと言う。
空冷Z独特のエキゾーストノイズは異質であり 筑波に轟くその咆哮を私は聞きたい。
そしてZがどこまでやれるか 行けるのか、その峻烈な走りを見たいと・・・
願わくばドラマチックな奇跡を・・・
後輩が製作してくれた音声付き動画です。