こんばんは、サンクチュアリー本店の中村です。
たまには製作ものも、真剣に書かなきゃな~ と思いまして・・・ (;^_^A
RCMー499 KZ900のオーナーである、神奈川県在住の H・Mさんから
新たに2台目を製作したいと承りました、RCMー568(その4)です!
専用の治具を用いピストンリセス(バルブの逃げ)を刃物で追加工して、インテーク&
エキゾースト共にビッグバルブに対応したものに仕様変更。
リセスを切れば 当然その分圧縮も下がるんですが、ベースピストンがノーブレストで
輸入していたヴォスナーの高圧縮型なのでトップボリュームが高く、リセス加工後でも
充分高圧縮なスペックを維持しています。
インテークフェイスφ38.5、エキゾーストフェイスφ33の特別なビッグバルブは
ステム径がZ系のノーマル7mmではなく、Ninjaと同じ5.5mm企画のもの。
中村の愛機 RCM USA A16R-001もそうだし、もちろんZレーサー3号機も
このステム径のビッグバルブを使用しています。
て 言うかですね、最近ではもう皆さん このバルブをリクエストされる方達が多くて
以前よりも使用頻度が圧倒的に増えました。
理由は明確で、このオリジナルバルブリテーナーの完成度が上がったからで、特徴は
何と言っても5.5mmステムでZ系のバルブスプリングが使用できる事・・・
一番最初は、江戸川区時代に中村が自分の愛機 A16-001用にと8個作ったのが
始まりで、その後 今の柏に移転してから改めて寸法を見直しミニマムロットで量産。
更にZレーサー3号機で ハイカムでオーバーレブさせてもバウンスする事なく、かつ
線間密着しないものをと追求して行った結果、バルブスプリングのレートを上げずに
バウンスさせない要素も必要である事に辿り着き、動弁系部品の合計軽量化に焦点を
おいてリテーナーの軽量化とスプリングセット荷重の設計を見直しました。
市販化に向けて自信が持てる為にも、キャドで解析をしながらレースでの限界領域で
テストを繰り返し、ようやく「これで良し!」と言うリテーナーが完成したんです。
タペットシムは左がZのノーマルアウターシムで、もう見るからに重そう・・・(^ ^;)
真ん中は皆さんご存知、GPz1100やゼファーなどで使用されてるインナーシムで
随分軽くなっていますが、それでも一番右のZZ-R1100などに使用されるシムは
更にコンパクトでより軽いもの・・・
中村の愛機 RCM A16R-001もZレーサー3号機も、オリジナルのリテーナーが
この一番右側の軽いシムを使える設計になっており、バルブ・リテーナー・コッター
そしてシムと、全ての合計重量が従来のノーマル系より飛躍的に軽くできているんです。
この5.5mmステムのビッグバルブが RCMで数多く使用される様になって来たので
専用のバルブガイドも200個ほど製作しました。
でも、もう既に相当な数のガイドを消費しており、このビッグバルブに変更している
Z系RCMの数の多さを物語っています。
トルク&パワーを求めれば自ずと耐久性は犠牲になり易いですが、このビッグバルブ
KITはバウンス対策、バルブスプリングのへたり対策、フリクションロスの対策と
耐久性への配慮が加えられており、レースと言うより むしろストリートマシンにこそ
お勧めなKITであると言えるでしょう。
むしろストリート向きでもあった事・・・ これって結構、大事な要素ですよね。
最も効果的で相性良いカムは ヨシムラ製ステージⅡ もしくはWEB製435クラスの
ハイカムで、バルブスプリングは同じくヨシムラ製、あるいはAPE製のどちらかが
マッチング良しでした。
感慨深かったのはヨシムラもAPEも どちらのメーカーも色々わかっていたんだなと
感じさせられるバネレートであった事で、改めて「さすが!」と感動 ( ;∀;)
そんなバルブスプリングのレートのバラツキを調整できるシムを入れても 線間密着を
起こさないセット荷重寸法で、その幅の広さもありがたいオリジナルリテーナー。
タペットには圧抜き穴を開けWPC処理を施したものを用いてますが、近い将来には
このタペットも合計軽量化を構成するパーツの一つとして 少し前より鍛造製法による
開発を始める事になりました。
バルブフェイスが大きいのに 重量は軽い。
二律背反する性質・・・ このアドバンテージが如何に有利である事か・・・
これはあくまでも個人的な考え方ですけど、自分はもうノーマルの7mmステム径に
「もしかしたら何のメリットもないかも?」 とすら 思い出しています。
ステム径が細いと吸排気のフロー効率も上がりますから、ポート拡大の効果もあるし
何より最大のメリットは動弁系のトラブルを抑制できる事で、先ほども言いましたが
これはストリートユースにおいても最も魅力のある性質だと思います。
バネレートが低ければ、カムリフトによる開閉時のフリクションロスが少ないから
良いと思われがちですけど、そんな簡単なイメ-ジではありません。
エンジンを1万回転まで回した時、凄い勢いで反復されるカムシャフトのリフトと
バルブの開閉で、バルブスプリングも凄いサイクルで伸びと縮みを繰り返している。
するとバネの伸縮がカムリフトの変化に追い付かなくなってしまいサージングする。
だから早い速度でビシャッと閉まるバネ・・・ つまり、強いバネが求められる。
でも、バルブやリテーナー、コッターやシムと言った、バルブスプリングが抱える
パーツ達が軽ければ スプリングの負担は大きく低減しますから、バネレートを強く
しなくてもバネは正確に 速く動いてくれる・・・
動弁系部品の合計軽量化は、バネレートを必然的にアップさせる効果がある訳です。
「バルブスプリングをめちゃくちゃ強いものにすればいいじゃん!」と思われた方も
おられるかと思いますが、そうすると線径を太くしたり巻きを荒くする必要がある。
太い線径のバネはハイカムと同時使用するとバネの隙間がロック(線間密着)する
ケースがあるんですが、仮にギリギリで線間密着しない寸法であっても、高回転時で
カムリフトが最大の時はバネの縮もうとする慣性がまだ残ってるから 必ずしもカムの
デュレーションに合わせて都合よく縮んだり伸びたりしてくれる訳でもない・・・
だから高回転時の状況を考慮すると、線間にわずかなマージンは必要になるんです。
「スプリングを荒巻にすれば」と言う案もあると思いますが、カムリフトが作用する
付近と離れる時のランプ角密着性が低下するし、何よりバネの”へたり” が早まるから
そうそう単純なものでもない・・・
このバネの ”へたり”・・・ 実は意外な伏兵で、あながち軽視できないものでしてね。
だから バネ自体にこれ以上を求めず、逆にバネを助けてレートアップの効果を得る事。
これが5.5mm径ステムのビッグバルブを用いた、合計軽量化のメリットなんです。
ハイカムの性能をしっかりと引き出すためにも、吸排気系の構成バランスは大事で
ビッグバルブ化はもちろん必須なんですが、ビッグバルブにするとどうしてもバルブ
単体での重量も増える訳で、そこを解消してやらないとバルブスプリングに無理を
させ続けてしまう・・・
実はバネって、結構 へたるもんなんですよねぇ~・・・ ( ̄▽ ̄;)
リテーナーも完成域に達したし、もう5.5mmステムバルブも量産するかなぁ・・・
ちなみにここまでのネタ、筑波TOTにエントリーしてるチームは大体知っていて
5.5mmステムのバルブだって、結構、それこそ随分と前から使われていたバルブ。
やっぱりレース活動しているコンストラクターさん達は 本当に凄いと思うな・・・
しかもずっと続けて来てるショップは最新のノウハウも持ってるし、学ぶべき点が
多いと感じます。
レースって言うと「別にレースをする訳じゃないんで」って答える方がおりますが
いやいや・・・ だから 違うんですってば・・・ (;^_^A
レースでは【速く走らせるのはあたり前の事】であって、むしろ【扱い易い事】と
【完走できる為にも壊れない事】と言うのが見落とされがち・・・
めちゃめちゃ馬力を上げないと勝てないですよね
それでも壊れない様に造るんだから、そりゃ~もう 相当すごい技術とノウハウが
なきゃ出来ない事スよ。
大手バイク4メーカーが レースからフィードバックした技術で車両を量産した様に
自分達小さな業者のパーツもレースからのフィードバックが生かされているんです。
シリンダーヘッドはもちろん、ツインプラグ仕様!
ツインプラグもレースイメージが強いかも知れませんが、元々は完全燃焼を追求した
排気ガス規制に有効な技法だった訳で、こういう優れた技術って 絶対に乗り易くなる
ための有効手段なんですよね・・・
バルブも含めて この辺も迷わず指定して来たH・Mさんは、なかなかの強者ですな。
軽量化された動弁系とハイカムとのマッチング・・・
いいですね~
エンジンに無理をさせずに得たトルク&パワーを、じっくり堪能して貰いたいなぁ ♪
H・Mさ~ん!
RCM-568 Z1-R! 5月の連休明け、いよいよ完成ですよーっ!
なんか
連休明け 完成って言葉・・・ 何となく申し訳ない気持ちになりますね (^ ^;)