前回に引き続き、RCM USA A16R-004 (その2)です。
コース上での走行と 燃調&点火マップの調整が進み、お昼休み時間が入ったので
ここでマシン自体の撮影を行いました。
リメイクされた RCM A16R-004、改めてご紹介しましょう。
サンクチュアリーオリジナルのフレームに KZ1000のエンジンを搭載・・・
いや、 空冷Zを17インチホイール専用フレームに変更したと言うのが、むしろ
正しい言い方なのかも知れません。
RCM USA A16R-004です。
バイクの本質は エンジンにあり・・・
空冷Zのエンジンがどれほど楽しく、どれほど魅力的かは、空冷Z乗りの方達なら
説明の必要なんてないでしょう。
エンジンこそが そのマシンの本当の個性。
トルク感や高回転域でのパワーの伸び、音や振動、そして そのエンジンの姿・形。
総体的な乗り味だって、実はエンジンが演出してるものなんですよね。
そのバイクを真に物語っているのはエンジンなのだと、心から確信しているんです。
でも、 時代はカーボンニュートラル・・・
1970年代の空冷Zのエンジンは 乗り手にとっては魅力的であっても、世界的な
社会情勢視点で見たら 肩身の狭い存在・・・
このA16は、車検証上のメーカー名も ”RCM” であり、2016年度の新車と
して たった30台だけ生産された特別限定的なマシン・・・
でも、2016年度式の新車としての存在でもあるから、当然その時代に適した
排気ガス規制をクリアしなければならない。
もちろん それは正式にクリアしており、胸を張って乗れるものなんですが・・・
1970年代の旧式な空冷Zのエンジンでありながら それを通す事が出来たのは
フューエルインジェクション化を始めとする、イチロクならではの様々な技法と
創意工夫があってこその結果でした。
革新的な技術が投入されながらも、ルックスはシャープなタンクフォルムを確保
するべく、Z-1系のタンクカバーを用いて アルミのインナータンク式を採用。
ツインスパーダブルクレードルフレームであるが故、細身なタンクシルエットは
難しい寸法感でしたが、シャープなフォルムだけは捨てられない要素だったので
絶妙な関係性で外装パーツに拘りました。
17インチホイールに完全適合したフレームですから、当然 前後輪17インチで
ホイールも世界選手権採用率ナンバー1のメーカー、イタリア O・Zレーシング。
その他のパーツメーカーも、OHLINSサスペンション、Bremboブレーキ
キャリパー、Allegriブレーキホース、SUNSTARディスクローターと
全てレーシング最高峰の世界で長期に渡って信頼されて来た 老舗メーカーばかり。
ちなみにエキゾーストは ナイトロレーシング製のウェルドクラフトチタンEXで
フレームヘッドパイプが30mmダウン、25mmバックしている為に、フロント
フォークがフルストロークした際に タイヤがエキパイに対してギリギリ近くなる
事から、排気ポートから下に延びるエキパイを一端 逆に曲げる形状にして干渉を
防いています。
これは従来の手曲げ製法では難しい事から輪切り溶接で造る事になったのですが
エキゾーストのスタイルも この様な理由があって行きついたものなんです。
イチロク専用 SCULPTUREスイングアームには、バーリング加工された
モナカ合わせ 7N01リブ角パイプスタビライザーを追加・・・
ピボット構造は ラジアル&スラストの両方向に対応したニードルベアリングと
ボールベアリングの現行車両と同じ二重構造で、ピボットシャフト径もZ系
ノーマルのφ16からφ20に大径化されてます。
その、フレームにおいて重要な部位となるピボット部本体は、SS400材から
総削り出しされたビレットボディ。
ピボット内幅もA16専用設計にて、Z系のノーマル寸法よりワイド幅になって
おり、ドライブチェーンラインに余裕を持たせたフレーム構造です。
高剛性化されただけでなく、効率よく バランス重視でリアタイヤのグリップを
車体に伝える構造となったシャシー。
となれば、そのストレスは必ずエンジンマウントに来る。
これは、これまでのZレーサーでのノウハウもあり、出力アップと剛性アップ
されたシャシーの相乗から、最後にしわ寄せが来るのはエンジンマウントにと
沢山の経験をして来ました。
レース活動は 大いなる源・・・
リア上部のエンジンハンガーは、A16専用のオフセットタイプにて マウント
ボルトに集中するストレスを軽減した 対策構造になっています。
締め付け時にわずかに捻じれるステムトップナットは、ドゥカティ製純正ナットを
用いる設計にした事で、組み付け時の誤差が起こらない構造に・・・
リメイクによりアップハンドル化されたハンドルバーには、先日デイトナさんから
リリースされた、RCMコンセプトハンドルバーを採用。
もちろん合わせて、ヘビーウェイトをボルト固定できるRCMコンセプトグリップ
エンドにしている事は言うまでもありません。
こちらも人気のコラボレート製品、ダートフリーク製 ZETA RCMコンセプト
フライトレバー。
このフライトレバーは、かのZETAブランドの中でRCMの名を冠していると
言う製品であり、RCMの為に、RCMの名を冠したフライトレバーを輩出して
くれたダートフリークさんには大変感謝しているんです。
ストリートマシンですから、使い勝手も軽視できません。
シングルシートだからって、シート本体が容易に脱着できなければ 整備性を含め
不便極まりない・・・
この004のシートは 最近のRCMに見られるものと同様、思わず「へぇ~」と
感心してしまう、キーを回してのワンアクション脱着構造。
「造り込むとは こう言うもの」と、そう思って頂けるようなシングルシートです。
自分達メカニック目線で見ると、エンジンがあって それを取り囲む様にフレームが
あり、フロントアクスルシャフト軸、リアアクスルシャフト軸、それぞれの距離が
感覚的にバランス良く見える車体と言うのは、よく走ってくれる・・・
もちろん、リアタイヤの設置点からフレームヘッドへと繋がるロール軸も マシンの
特性を決める重要な要素で、ここがイチロクの最も優れた利点だと言えます。
フレームは何も 剛性だけが全てではありません。
剛性よりもジオメトリが重要だし、ステムシャフトやスイングアームピボットなど
フレームに直接つながっている軸受け部の荷重値や フリクションロスの低減など
この辺りの構造を変える方が、剛性を上げるよりもずっと効果的。
それはレーシングスピードでなく、公道での法定速度域においても十分体感できる
ものなので、ツーリングや街乗りだけでも「乗り易い」と感じれるものなんです。
Zのノーマルフレームは例えるならアメリカンバイクの様な骨格ですから、本来
現代のハイスペックラジアルタイヤの性質に適したシャシーではありません。
Z系のRCMは、それらネガティブな要素を減少させて バランス良くマッチング
させているので、とてもよく走るのですが・・・
A16の世界観は正に 「更にもう一つ先があったのか」と 感じ取る事ができる
それほどインパクトある車体なんです。
「言うは易しの類」ではありません。
「実際に乗って頂かれば わかります」と 自信を持って試乗車をご用意しました。
(最終回)に続く
= 試乗をご希望の皆さんへ =
毎週水曜日、ならびに雨天時、あるいは路面が濡れている日は試乗が出来ません。
また 多忙な業務進行への悪影響や混乱を考えて、基本1日お一人の試乗とさせて
頂いており、事前に電話、またはメールなどでのご予約をお願いしております。
試乗前に申し込み誓約書へのご記入と捺印を頂き、運転免許証のコピーも頂いて
おりますので、免許証と印鑑をお忘れなくご用意ください。
すでに試乗の申し込みが入っておりまして、予想を超えた状況もあり得る事から
規約を設けるべきと判断させて頂きました。
レギュレーション遵守で乗って頂けるのなら大歓迎ですので、何卒ご理解のほど
よろしくお願い致します。
(最終回に続く)