ふと車体を押し引きしただけで「これは!」と、必ず誰しもが驚く・・・
空冷Zのエンジンはご存知の様に重いがA16とはそんなシャシーのマシンです。
それはただ単にカスタムバイクによくある軽さとは違った異質の軽さ・・・
ステムヘッドパイプ位置が低くホイールベースも短い事から、空冷Zのノーマル
フレームとは車体ロール軸が異なり ジオメトリの違いが生み出している産物。
そして押し引きしただけで異質な軽さを感じると言う事は、走らせた時の軽さは
空冷Zが最後に到達したローリング性能の世界、それがRCM A16。
それほど軽いのなら尚更 空冷Zのエンジンではなく、最近の水冷エンジンの方が
もっと軽くて良かったんでは?と 思われる事でしょう。
でも・・・
それではダメなんです。
空冷Zのエンジンでなければ ダメ・・・
空冷Zのエンジンでなきゃ 嫌だったんです!(笑)
S・I さんの RCM USA A16R‐005(その7)です!
マシンの仕様はメカニカルでスパルタンなルックスを好む S・Iさんですが
走った時にマシンに要求するものは 乗り易さ・扱い易さと言った実用性と
快適性・・・ 故にS・Iさん、エンジンに求めているものが人一倍濃くて
多気筒エンジンの重量バランスには強い拘りを見せています。
となれば組み立て式クランクシャフトは一度分解し 4つのコンロッド重量を
きっちり揃える必要あり。
4つの内で一番軽いコンロッドを基準にし、他の3つをリューターで根気よく
研磨して行きます。
Zレーサー3号機のエンジンでも同じ作業をしてますが 3号機のクランクは
大端部内径が φ41で小端部が φ18のGPz1100クランク・・・
そのため 誠太郎自身がその時に製作した治具を使用する事ができず、新たに
大端部 φ39 小端部 φ17の治具を製作して測定。
コンロッドは単体での重量はもちろん 高回転で回る事から小端部と大端部の
末端部重量を揃える事が重要で、ここを合わせる事で 始めて運動ロスが減少
しますから、この手法で合わせないと重量合わせの効果が見込めないんです。
最後にコンマ台の数値合わせで仕上げる為 バッファーを用いて研磨・・・
鏡面加工が目的ではありません。 あくまでも重量合わせの為の研磨です。
発展形として このまま全部を鏡面に仕上げると言うメニューもあり、更に
コンロッドが単体な内にWPC処理を施すと言う Zレーサー3号機と同じ
仕様も出来るんですが、S・Iさんのコンセプトは後軸140馬力オーバー
エンジンを求めている訳ではなく 乗り易さ・扱い易さに重点を置いたもの。
故にコンロッドの強化には固執しておらず、バランスのみ及第点を取れれば
よし!と目的が明確だった事から この時点で加工は終了。
小端部&大端部の部位別重量を合わせ、当然 全体重量もピタリ同じ・・・
これでクランクシャフトの組み立てに移行できます (^^)v
一方で車体装備も進行・・・
下地研磨してアルマイト処理に出ていたシートベースが戻って来ました。
このあとスポンジ成型に入りレザーを張れば、シート完成です!
今回のA16R‐005はSSタイプのシートカウルの為、完全オリジナルの
シートレールをワンオフするべく3Dキャドで図面を作成・・・
サンクチュアリー本店でメカ達が日々使っている2Dキャドは それはそれで
良いものなんですが 実はまだ入門的な序の口で、紙図面で書いてるレベルと
それほど大差ないもの。
レーザーカット加工で造る 板物の様な極簡単な造り物なら問題ないんですが
CNC削り出しの部品の製作となると どうしてもこの3Dキャドを駆使する
必要性があるんです。
3Dキャドは単なる寸法製図性に優れているだけでなく、切削後の実厚み
検証や断面解析が可能で、2Dでは出来ない強度計算まで出来るもの。
”もの造り” を本当に行っているのなら 最低限必要となる3Dキャド・・・
サンクチュアリー本店ではシャシーダイナモやTスロットテーブルと同じ位
なくてはならない絶対的なツールとなっており、工場長の誠太郎を筆頭に
メカニック全員が使いこなせる様にと推進しています。
ちなみにこれが完成した ジュラルミン製ワンオフシートレール。
既にアルマイト処理済みで、もちろんメインフレームにボルトオンです ♪
フューエルインジェクションに伴う専用ハーネス製作も始まりました。
これを見ただけで身の毛もよだつのは 自分だけでしょうか・・・ (^^;
そして数日後・・・
クランクシャフトが組み上がりました!
Weight & Phase Matching Crankshaft 略して WPMCとでも名づけますか(笑)
せっかく分解組み立てしたんですから、もちろんベアリングは全て新品に。
位相も併せて芯だしを施したクランクシャフトは 回転によるムラや振動が
低減され 気持ちよくスムーズに回るでしょう。
いいですねぇ~!
重量合わせしリビルドしたクランクのエンジンは、こんなに違うんだ!って
ほんと 感動的ですからね (^^)/
いよいよエンジン組み立てが始まります。
次回はオリジナルのスリッパークラッチ機構と、車体の立ち上げなどを
お見せする予定。
まもなく5月ですが・・・ (;^ ^A