こんばんは、サンクチュアリー本店の中村です。
カムチェーンガイド開発の続き(最終回)
最後にYoutube動画もありますので、ぜひ見て頂ければと思います。

自分も永井も、とにかくエンジンノイズに敏感になっていた。
ここで聞いていても、あきらかに完全静音状態であるにも関わらず疑ってしまう。
まぁ、そういうものだよな・・・ と 思った。

今回のテスト車両が、単なる在庫していた中古車をベースに ほぼ即席の作業で
コース走行仕様にした事。
吊るしの前後サスに、ノーマルのブレーキ&ノーマルのエンジン、とどめは
昨年10月にエビスで走行したタイヤの使い回しである事など、ネガティブな
要因は全て上田に伝えた。

上田にとっては面白くも何ともない走行になるだろうと気が引けたが、目的が
パーツ開発テストである旨を受け取ってくれており、快く一本目に臨み出す。
開発とは言え 危険を伴ってはいけない所だから、最初は慎重に様子を見ながら
先ずは3周回でピットインするよう送り出した。

タイムアップの為の走行ではない、あくまでもエンジンを酷使したまま周回を
重ねて貰うだけなのだが、かと言ってビギナーレベルの走り方ではエンジンを
使い切れないから、それではテストにならない・・・
ハイスピードで走る必要はあるのだから、ピットで見守る中コース2000を
走行する上でアベレージを上げられない条件が出てこない様にと祈るばかり。
そのくらい、即席でコース向けにした只のゼファー1100であった・・・

定石通り3周でピットインし、すぐさま車体回りとエンジンノイズを確認。
上田も永井と言葉を交わして「ここだけは」と言う部分だけ直してコースイン。
どうやら何とかテストが成立しそうだ。

徐々にペースアップして行く上田。
コーナーでのアプローチはともかく、エンジンは吹け切っていたので良し!

二本目に移行する1時間ほどのインターバルで、上田と永井が会話を交わす。
「メカニックは、ライダーがいてこそのメカニックである」と・・・
サンクチュアリーでは、メカに個人の差はあれど この基本的な考えを必ず
大切にするよう伝えている。
これは何も、レースやサーキット走行に限った話ではない。
いや、むしろ実はストリートの方が よりこの要素を求められるのだと思う。
最初の一歩目こそがメカニックとライダーとの ”たわいもないおしゃべり”で
ここのアプローチが出来ない、あるいはやりたがらないメカだと、残念だが
重要な仕事は任せられないものである。

二本目が始まった10時頃、気温は35度?・・・
いや、もっと高いと思われた。

上田も少しづつ、このバイクの「これ以上は越えては行けない一線」が
測れ初めて来ている様に見える。

ところが、1分10秒をすぎても戻って来ない・・・
何かあったのは間違いなく、噴き出る汗の暑さの中で 思わず冷や汗までかく。

ストリートサスのバネレートのままだから、これは予測しておくべきだったが
2ヘアのバンク時、ピックアップコイルハーネスが路面に擦って千切れてしまい
点火カットからストールしていた。

如何にバネレートが低く サスが入り切っていたとは言え、奇しくもZレーサー
3号機の「幻の57秒台ラップ」を達成していたであろう周回と同じトラブル。
今後、コース走行時はピックアップコイルハーネスを下ではなく上から出せと
サンクチュアリーでもう一つの習慣が出来そうである。

三本目の走行まで さほど時間がなかったが、エンジンが熱垂れし始めたせいか
「ミッションの入りが悪くなって来た」と上田が訴えかけて来たので、ここで
オイル交換を行っておく事に・・・
ミッションもそうだが、フロントブレーキが垂れてペタペタになっている・・・
ブレーキフルードはレース向きのものに変更して来ていたが、即席でコース走行
できる様にした各部の限界が、たちまち見え始めていた。

それでも上田は、上手く走ってくれた。
ついつい同じクラス走行をしているマシンとバトルしたくなる場面もあったが
今回のテストの趣旨をよく理解してくれており、万が一 何かあったらテストが
中止になってしまうリスクを最重要視して 最後までテスト走行に徹してくれた。
上田隆仁に、この場を借り 改めて感謝の意を伝えたいと思う。
やがて

酷暑の環境下、レギュラーグレードのオイルでエンジンを徹底的に痛めつけた
テスト走行は終了。

予定していた全ての走行終了後、いそいそと廃油をチェック・・・

オイルフィルターに目立った異物は無し。
では、エンジンオイル自体はと言えば・・・

こちらも前回とは明らかに違って、異物らしきものは殆ど見当たらず。
まだエンジンを分解してみなければ わからないが・・・

どうやら、これ以上厳しい環境でのテストは中々無いのではと思える、そんな
手応えを感じた一日は終わった。
そして帰社後・・・

夕方・・・
間違いなく疲れているにも関わらず、永井は手を止めない。

気になるガイドはどうかと言えば、良好!
リアガイドの反り返りは この後確認するが、現時点では極めて良好である。

おそるおそる、クランクケースも分解した・・・

芯金が折れていたプライマリーチェーンガイドも、良好。
芯金はビクともしておらず、ゴムも至って状態が良い!
アッパーガイド、フロントガイド、リアガイドも今回は一切反り返っておらず
プライマリーチェーンガイドも健全そのものである!
内心(出来た)と心は踊るも、敢えて ここで終わりにせず・・・

なんと、またすぐに組み戻した・・・

そして、最終走者である吾希人に託す・・・
念のための、更なる念のため
ハイウェイを法定速度内で一定巡行してもらう。
しつこい位、連続で延々とガス欠する前の距離感で エンジン回転を上げたまま
集中して巡行し続けて貰う事にした。
もちろん
これが終った後で、またエンジンを下ろして分解している。
このテストの、もっとも辛く苦しい一面であった・・・
詳細は、8月31日発行の新カタログ 「The BIBLE-11」にて





