あくまで個人事ですが、私は今まで空冷Zに当時らしさとか 雰囲気と言ったものを
求めた事がなかった・・・
それは現在も継続中で、生涯 そうなんだろうと思う。
もちろんノーマル系の いわゆるZが嫌いな訳ではない・・・
そもそも嫌いだったら10代の頃から40年もの間、Zにどっぷりはまりはしない。
多くの人達と 見方や求めるものが違うだけである。
今も尚、やめる事なく進化して行ったなら 果たしてどこまで速くなるものなのか
どこに辿り着けるのかを、ただ それを知りたいだけ・・・ 見たいだけ・・・
ノスタルジックな存在ではなく、今も現役のバイクとしてZを見ていたかったから
しつこく同じ事にしがみついて 未だにあきらめられず・・・
ZはZらしくあればいいと、誰もやらなくなったから 一人で向きになっている?
そうかも知れないが やめる事が出来ない・・・
分相応にも、水冷&油冷エンジンのマシン達に対し 対等に勝負できるZを夢見て
35年間も同じ事を夢み続けて来た。
だからそれが 例えたった1台、 一人になろうとも・・・
Z同士の戦いではなく、不利を承知で抗う 水冷・油冷マシン達との熾烈なバトル。
Zの限界を超えてでも、凄絶なる最後の走りを この目で垣間見たいと思う・・・
1台くらい、そんなマシンの史実があったって いいだろう。
つい先日、筑波サーキットから届いた封書・・・
コロナ禍により開催を見送られた今年5月のTOTだが、11月は無観客にて開催
されるとの告知であった。
かのレースは、まだ 記憶に新しい・・・
58秒664
そのタイムは絶賛できる記録ながらも、コースレコードには わずかに届かず・・・
だが 並みいるハーキュリーズマシンに囲まれて、國川浩道はよく戦ったと思う。
空冷Zでも まだやれると思った・・・
2019年の11月は まだコロナの脅威などなく、今となっては懐かしい会食の
画像だが、共にレースを支えてくれた関係者が一堂に集まり祝勝を上げた。
熟成されていない 下ろしたてのレーサーと言うのは、とにかく白紙だ・・・
ただでさえ空冷Zと言うハンディは大きいのに、出来上がったばかりのマシンで
臨んだ事から 國川自身も辛く苦しいレース経験だった。
だが、かのレースは そのあげくに掴んだ勝利であり、その想いは皆の胸を打った。
レース活動が苦しかった分、幾人かの者が涙ぐんでいたのを この場にいた人間は
憶えているはず・・・
それでも皆 照れる事無く、それを受け入れるが如く かの苦闘を思い出すかの様に
聞き入っていた。
江戸川区時代には経験した事がない 神妙な空気だったが、誰一人としてこの場を
違和感として感じた者はいなかった。
一方で 國川浩道は語った・・・ 3号機は57秒台に入れると・・・
57秒台?
オリジナルフレーム+インジェクションとは言え、Zでそんなタイムが出るか?
あり得ない・・・ 絶対 無理だ・・・
國川には悪いと思ったが、いくら何でも 普通はそう思う。
明けて2020年は、コロナ過で世の中が混乱・・・
この未曽有の危機に、TOT5月大会も中止になると言う異例の事態であった。
昨年の11月に精魂使い果たしたのは確かであり、5月の大会は見送ろうかと
考えてた矢先の中止告知であったから、これはこれで何となく気が楽になった。
だが前大会、賞賛に値するレース結果であったにも拘わらず 目指した到達点に
届いていなかったのも事実で、未完全燃焼である事も確かな事・・・
となれば・・・
無観客であろうが何だろうが、避けては通れない・・・
あの日 あの時、やり残してしまった課題であるシリンダーヘッドを本来の構想で
完成させる事が急務だった。
ZX‐10Rの φ43純正スロットルボディを アダプターを介さずにヘッドへ
直接取り付けし、インテークポートを5度 傾斜角強めた セミダウンドラフト
”ハイポート”を完成させる事・・・
昨年のレースウィーク中に 溶接加工だけは終わらせておいたヘッドだったが
押し寄せるトラブルに対処するのが精一杯で、未完のままだったものだ。
別段ノーマルシリンダーヘッドのポテンシャルが低かった訳ではないだろう。
むしろ空冷Zのエンジンとしては 150馬力前後がピーク付近と捉えていたし
そう言う意味でも後軸146.7馬力は まずまずな数値なんだと思う・・・
だがこの馬力では、あの驚異的パワーを誇る 油冷・水冷マシンと勝負できない。
何とかあと10馬力・・・ いや、せめて5馬力でもいいから上乗せしたかった。
この構想していたヘッドが どの程度馬力の上乗せに繋がるかはわからないが
やり残していた加工を着手。
接客や社長業などに追われて なかなか時間が取れない立場であるが、なるべく
誠太郎を始めとするメカニック達の負担を減らしたいと、自ら手を下す事に。
もちろん課題は車体側にもあって、ここも同時進行で行わねばならなかった。
日々の業務が忙しいのは、皆同じ・・・
数あるRCM製作や一般整備と言った仕事の合間を縫って、レーサーに取り組む。
実はこれがきつい・・・ 実に きついのだ。
でも いつもそれを理由にしていたら、レースは出来ない・・・
それが理由なら 一生ずっと・・・ ずっと 出来やしないだろう。
本当はレースなど出ない方が その店の商売にとっては良いのかも知れない・・・
また おかしな物言いかも知れないが、レースに出なければ その店の本当の実力が
多くの人達に知られる事もないだろう・・・
商売重視の 無難な選択である。
だが 私を始めとするサンクチュアリー本店のスタッフ達に、その選択肢はない。
仕事が犠牲になる事は避けられないから 合間に・・・ レース後に頑張る・・・
店の実力は? 臨む所だ・・・
雄弁な語りではなく、むしろ公の場で 多くの人達の前で実証できるのだから。
57秒台などと言う とんでもないゴールは、正直今もシナリオにはない・・・
いくら何でもやれる事とやれない事の分別は、大人としての自分の中に在るから。
だが、もし・・・
もしもZで そこに辿り着くような事があるのなら・・・
もう それこそ自分の人生観を一つ、何か ひも解くほどのものであると思う・・・
裂帛の気迫を持って臨もう。
サンクチュアリー クライマックス章の一つに相応しい、ゼッケン39最後の挑戦。
いざ、Round2へ!