こんばんは、サンクチュアリー本店の中村です。
今年8月に発行予定の新カタログ THE BIBLE-11の掲載に向けて
新たな製品の鋭意開発が進む、ここ数ヵ月・・・
いや、 かれこれ1年?
本当に8月で大丈夫かい (((;゚Д゚))) と、右往左往してる日々でもあります。
新ラインナップが多く加わる為、バイブルとしては久々ボリューム感のある
カタログになるのですが、他の業者が造った部品を右から左で売るだけなら
簡単ですが、社内開発 ならびに内製が絡むと とにかく大変・・・
サンクチュアリーでは、別の業者さんが造った部品であれば それを内製とは
唄わず、承諾を得られた業者さんの場合 お名前を出すよう心がけています。
他業者様からの仕入れ品を如何にも自社製と見せるのは、自分の方針として
”恥ずべき行為” ・・・
如何にも「自社製の部品なんだ」とアピールする内製は、内製でもなんでも
ないですよね。
はったり抜き・・・ なるべく正直ベースで紹介する。
それがサンクチュアリーのプライドだと思っています。
なんて カッコつけましたが、自分もまだまだ勉強中の身 (;^_^A
ハード系パーツの社内開発はプライドだけで出来る代物ではありません。
故に時間ばかり掛かっているんですが、今回お見せする製品も正にその類。
前回のオイルキャッチタンクに続く、第二弾はスターターワンウェイギヤ。
今回も画像多めにてご紹介します。
皆さんおなじみの愛読誌、月刊ヘリテイジ&レジェンズ誌の先月号。
特集は「CB-F」なんですが、自分の連載コラムのページにて・・・
MK2系のスターターワンウェイクラッチギヤを先行で紹介していたんです。
その名の通り、スターターモーターからの駆動をクランクシャフトに伝達する
ワンウェイクラッチに収納されたフリーホイールギヤ。
手にしてるのは試作品で現在はテストが進んでますが、この試作が出来るまで
結構時間が掛かりました。
今回の部品は少し前にメーカー欠品になったもので、新設計品ではない
既存パーツのリプロダクト。
となれば、その対象となる純正パーツの測定から始まります。
手の温度(人肌)が測定器具に伝わると0.01レベルで誤差が発生するため
マイクロメーターなど直接触らず、とにかく速やかに0点設定を行っている。
この測定の準備が早く、まぁ~ 実に手際が良い事。
(なんと手慣れているんだ・・・)と、見ていて感心するばかり。
ディンクスの工場長は0.01mmの誤差を絶対に許さない性格でして・・・
たま~に、ついて行けなくなります (^_^;)
内径部はニードルベアリングのアウターレースで、複数個所測定します。
そして外径部、ワンウェイクラッチが掛かるレース部も当然複数個所測定。
0.01mm単位で正確に測定した後、許せる公差を導き出します。
この公差もディンクスは厳しく、たま~に ついて行けなくなります (^_^;)
寸法測定が出来たら、続いては作図に・・・
2Dキャド→3Dモデリングへと、社内で一から完成させてしまいましょう。
特殊な機能や個性、またオリジナルのデザイン性などが無い部品ですが
念のため自分も入って各部を慎重に確認して行きます。
このモデリングを完成させるのに意外に時間が必要なんです。
図面をベースに切削業者さんが生産しますからミスは許されません。
作図と同時進行で行っていたのが、材質選定と熱処理の調査・・・
これは専門機関に外注で依頼しておりました。
これはロックウェル硬度試験機と言って、表面硬度を数値化する機械です。
ダイヤモンド製単子を測定物に押し付け、その押し付けた跡の幅や深さを
測定し 硬度を数値化するもの。
表層の硬度を知り、それと同じ あるいは僅かでもそれを上回る数値の物を
造るために必要な検査なんです。
すみません、一応企業秘密なので検査成績の数値まではお見せ出来ませんが
3ヵ所の部位を測定しました。
聞いた事がある方もいると思いますが、測定計値はHRCと呼ばれる規格。
他にも、ビッカースやブリネルなどを使用した硬度測定規格はありますが
このロックウェルが最も一般的ではないかと思います。
A歯先、Bギヤ本体の薄肉部、Cセンターレースと、延べ3ヵ所の硬度を
測定したんですが、ワンピースの部品であるにも関わらず、部位によって
それぞれ硬度が大きく異なっておりました。
測定部位別での硬度の違いが大きかった事から、熱処理方法もある程度
予測できると言う具合。
ちなみに材質は、スパーク放電発光分光分析と言う検査で金属の種類を
特定したんですが、ブログが長くなってしまうので 別の機会にご紹介を
したいと思います
こうして出来上がって来た試作ギヤ。
先ずは寸法感を確認するため、あくまで合わせの仮組みをしてみました。
セルモーターとワンウェイクラッチギヤとの間にトレイン駆動で介される
変速ギヤとのバックラッシを確認。
そもそもこの変速ギヤの軸部がグラつきの大きい固定でしたので、基準が
曖昧ではありますが 一先ずは良い感じでした。
最後はテスト!
画像のZ1は 自分の先輩で半スタッフみたいな存在の夏見さんのマシン。
Z1ですが実はクランクがMK2用に変更されており、その上エンジンも
かなりチューニングされている事から相当コンプレッションが高い。
おまけにガンガン走る人だから、テストには売ってつけの車両なんです。
ノーマルのリプロダクト品なんですから、ノーマルのワンウェイクラッチに
組み合わせます。
クランクエンドに組みつけて完成!
今回ばかりはスタータークラッチのギヤですから、セルモーターを装備しない
Zレーサーではテストが出来ず、夏見さんにテストをお願いした次第でした。
夏見さんは間もなく北海道ツーリングに行くとの事で、楽しそう (^ ^;)
試作品の硬度が正常に仕上がっているか 二度目のロックウェル硬さ試験も
依頼しており「それを確認してからの方がいいですよ」と言ったんですが
この夏見さん、とにかく昔ながらのZ乗り気質な方でして・・・
「そんなもんセルが空回りし始めたら押し掛けすりゃ~いいんだよ!」 と
言い残して去って行かれました。
なにせ「オイル漏れすんのがZ!あたり前だろ!」と、未だに怒られ口調で
叱って来るような人なんで、どうやら気にならないらしいです。
夏見さん 自分達がまだ20代の頃に第三京浜に通っていた頃のワイルドな
Z乗りは、もはや絶滅危惧種ですからね (;^_^A
テスト走行を兼ねたツーリング
お気をつけて行ってらっしゃいませ~!