こんばんは、サンクチュアリー本店の中村です。
猛暑迎える梅雨明け時期にでも更新しようと 書き溜めていたネタがありまして
より暑さ増すこれからの時期・・・ 画像多数、長編にてご紹介いたします。
昔からレースをやるたび、何かしら新しい製品が生まれる傾向がありました。
今回ご紹介する製品も 正にそんなセオリーから生まれたパーツです。
「上がったぁ!」
そんな思わず声を荒げたのは 昨年10月頃の事だったと思いますが、その頃
Zレーサー3号機のエンジン発熱対策としてオイルポンプを交換し油圧を測定。
最大でノーマルの5倍近くに上がった油圧を確認・・・
別段ノーマルのオイルポンプが壊れていた訳ではありませんが、Z系のポンプは
外接ギヤ式が故に 元々圧力が上がりにくく、特にエンジン回転数の上昇に共って
ある一定領域で不安定化してしまう構造上の問題があった・・・
更にギヤ式ポンプ最大の課題となるのが流体蒸気の充満からエアーが噛み込んで
吐出量が低下してしまうキャビテーション現象で、これこそが最大の難題であり
以前から気になっていた所でした。
現代の自動車やオートバイの4サイクルエンジンに採用されているオイルポンプは
今や殆どが この内接ローター式であるトロコイドオイルポンプです。
Z系ノーマルオイルポンプの外接ギヤ式に見られる 過回転時のキャビテーションが
起こりにくい内接構造こそがトロコイドの最も大きな利点であり、また外接ギヤ式
ポンプの寿命に直結する軸受け荷重も少ない事から ポンプ本体の耐久性も高いなど
その利点と信頼性は多岐に渡る性質である。
オイルクーラーへ圧送する数値、ここでは単純に得られた圧力がそのままコアへ
反映されたとして、コア内部をオイルが満量充填されて流れるイメージ・・・
國川浩道の激しいライディングに酷使された空冷Zのチューニングエンジンで
徐々にタイムが上がって行ったにも拘わらず 逆に油温を低下させて行けた事は
大きな要因であり、紛れもない事実であった。
オイルクーラー冷却コアへの圧送力だけではない・・・
クランク軸やシリンダーヘッドへの循環にまで好影響が出てると思える節がある。
この頃一度、カムジャーナルの一部にかじりを起こすと言うトラブルがあったが
それは溶接して修正をしたシリンダーヘッドのカムラインに狂いがあったからで
むしろ、このトロコイドオイルポンプでなければ かじりどころでは済まなかった
かもしれないと、今では思う・・・
最初期のロットではケース個体差によるポンプギヤバックラッシにコンマ台の
見落とし誤差があり、一部の車両にギヤノイズが発生したものがありました。
また同じくクランクケース側 個体差によるポンプローターボディとの干渉など
初期にご迷惑おかけしたお客様には この場を借りて改めてお詫び申し上げます。
本当に申し訳ありませんでした。
その後 製品はすぐに改善され・・・
沢山の車両で交換が実施・・・
全ての画像を撮り切れてませんが、今現在も日々 相当な台数の交換が続いてます。
オイル交換時に一緒に行うのが能率よく、交換希望の車両が連続で続いた事から
オイルパンガスケットを常備在庫する習慣が生まれたほどで・・・ (^^;)
次から次へ「待ってました!」とばかりの、オイルポンプ交換続き・・・
取り外された旧式のノーマルオイルポンプ・・・
特にオイルポンプに寿命が来ていた訳ではないんですが、外接ギヤ式ポンプでは
不安定になりやすい、安定した油圧と途切れる事のない吐出量が欲しいと言う事で
前々から沢山の方達がトロコイドポンプに興味を持っていたんです・・・
オイルクーラーだけでなく タービンに圧送する油圧も不足気味だった事から
オーナーは迷わずトロコイド式をチョイス・・・
今までの外接ギヤ式ポンプでは足りなかった不足要素を今回解決させてます。
このオイルポンプの要ともなるローター本体は 自動車メーカーさんが生産・販売
しているものを私達がユーザーとして購入しています。
ボディはジュラルミン総削り出しにて製作していますが、このオイルポンプ・・・
そもそもは かの ”YRPレーシング” さんが最初にKIT化された製品の復刻版で
いくつか新しいアイディアが加わっているものの 基本的にはYRPレーシング製
オイルポンプそのものと言って良いものなんです。
実はYRPレーシングさん、このZ用トロコイドオイルポンプをパテント出願して
いて、それでは法的にも勝手に製造販売できないと知人に相談したところ パテント
所有しておられるYRPレーシングさん側の方に繋いでくれて、パテント使用料を
きちんとお支払いした上で生産させて頂きますと合意に至った次第でした。
脱着できるオイルストレーナー構造も、YRPレーシングさんと同じ構造・・・
でも 一つアイディアを加えた部分があって、ここから更に発展して行ける様に
なっている・・・
その発展できる部分については またいずれご紹介させて頂きますが、現在のこの
ポンプをベースにアップデートして行ける様になってますので、その追加される
新機能を是非楽しみにして頂きたいと思います (^^)/
ポンプボディとストレーナーボディの合わせ面にOリングを入れたのも今回新たに
追加したアイディアで、合わせ面にケミカルを塗らなくて済む事から分解整備性が
向上しました・・・
長期で使用して行った際に、部分的にでもパーツ交換ができるオーバーホールの
利便性を何としても持たせてあげたかったんです・・・
自分がユーザーならそう言うリペア機構も、ありがたいと感じるはずですからね ♪
全てのリペアパーツが購入可能であり、分解洗浄も可能である事・・・
ユーザーにとっては とても大切な要素だと思います。
耐久性に話を戻しますが、実はこのφ4のポンプギヤピンも大変頼もしい存在!
Z1000J/R以降の一部に採用され、空冷GPz1100では 全車このφ4サイズピンに
純正でも変更された対策径のギヤピンです。
これはどちらも使用していたもので、奥がZ系のノーマル φ3ギヤピン・・・
手前がZレーサー3号機で使用された今回のポンプに採用されてるφ4ピンです。
細いφ3ピンの方は摩耗して段差が付いてしまっているの、わかりますか?
メーカーが途中からサイズ変更した事には 必ず意味がある・・・
特にキャビテーションを起こし易い外接ギヤポンプでは 交差して噛み合う歯車の
間に生まれた空所にオイルが流れ込んだ際 発生する壊圧を受けて、激しい衝撃が
生まれるから その時に軸とギヤを繋ぐこのピンに大きな負担が掛かる事は容易に
想像できる事・・・
オイルパン形状が畜量少ない事からフル加速時にオイルが後部に移動してしまい
エアーを噛み込む事もキャビテーション化に繋がりますし・・・
そんなのも含めて、何もかもがキャビテーションとの戦いだったんでしょうね。
今なら少しわかる気がする。
最近では日本中のバイク屋さんから相当数のオーダーが入っており、時折まとめて
ポンプKITを組み立てるんですが、精密な組み立て工程が故に 基本メカニックが
行う作業となっていまして・・・
でも、皆 忙しいもんだから・・・
結局 自分が組み立てるはめに・・・
やばい・・・ 墓穴 掘ったかも・・・ (;^ ^A
でも、ちょっと思ったんですが・・・
色んなアフターマーケットパーツが沢山存在していますが、Z系エンジンの場合
何よりもこのトロコイドポンプに交換する事が有効なんじゃないかと・・・
少し大袈裟に聞こえるかも知れませんが 交換後の油温の安定感は実感できるもの
だし、低いアイドリング回転時でもオイル警告灯の点滅など 全く持ってなし。
エンジンをハイレスポンスさせた時も振動が減った様に感じる・・・
ちなみにこのポンプ、今まで皆さんに自分から強くお勧めした事がなかったかと
思いませんか?
実際旧くなって来てはいても 完全に壊れてないポンプをむやみに新品に交換する
行為ってどうなんだろうか? と、メカニック目線でそう捉えていたからなんです。
それでも内接ローター式の このトロコイドに関してのみ言えば・・・
少しでもエンジンに手を入れてるマシンならば、間違いなく恩恵が得られます。
むしろ、何を差し置いてもこれを一番に採用すべきなのではと・・・
そう思うほどに。
空冷Zで、波打るハイパワーな水冷・油冷エンジンマシン達と真向勝負するには
空冷であるが故に油温制御が出来てこそと、そんな思いが最初のきっかけでした。
あの時、國川浩道は語っていた。
「レースではストリートの10倍 マシンに負担が掛かっていると言われてます」の
言葉に従い 思ったのは、限界域で酷使されてるエンジンを少しでもカバーする事が
出来るパーツを投入する事であり、そしてその製品をレースと言う過酷な現場で、
実戦投入と言う形で製品テストを出来た事が 今は何より良かったと思っています。
本当に・・・ とにかく得るもの多きレースでした・・・
苦しくて辛くて、キっツい レースでしたけど・・・(苦笑)
最後にYRPレーシング代表 故山幡社長とご家族の皆さん。
このZ用トロコイドローターオイルポンプの再販を繋いで頂いた関係者の方々に対し
改めて感謝の意を示したいと思います。
本当にありがとうございました。
いつまで生産し続ける事が出来るか わかりませんが、一人でも多くのZ乗りの方に
このトロコイドポンプの高性能ぶりを実感して頂きたいと・・・
そんな風に思っています。
このハイプレッシャーオイルポンプKITは お陰様でつい先日最初のロットが完売し
今現在は第2ロットに入っております。
第1ロット分が完売後に納期が大きく遅れたバックオーダーのお客様が多数おられて
そこでも納期の件でご迷惑お掛けした事を重ねてお詫びさせて頂きます。
サンクチュアリー本店 (株)ノーブレスト代表 中村 博行